1. 甲状腺の位置と形
甲状腺はのどぼとけのすぐ下で気管を包み込むようにあり、蝶が翼を広げたような形をしています。
片翼の幅は約2㎝、長さは約5㎝であり、両翼の重さの合計は、約15~20gです。
2. 正常な甲状腺
首の前側にある甲状腺は正常な場合には外からわからないくらいの大きさ・厚さをしています。甲状腺に異常が起こると甲状腺全体が大きくなり、手で触れたり外から見えるようになります。
しかし、異常がない場合でも首が長く、痩せている女性等からは手で触れることがあり、また甲状腺が通常の位置より上にある場合にも余計に大きく見えることがあります。甲状腺に発生した疾患によって大きさの変化も異なります。大抵の場合は甲状腺全体が大きくなりますが、一部だけが大きくなるかまたその一部でもある部分だけが大きくなる場合もあります。また甲状腺に結節が発生して大きくなることもあります。
3. 甲状腺の役割
甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌されます。私たちの体を外部の環境変化から正常に維持させ、様々な機能を円滑にするために体の中からは多様なホルモンが分泌されます。甲状腺ホルモンはこれらのホルモンの一つです。甲状腺ホルモンは人が生きていくのになくてはならないものであり、代謝の速度を調節する機能を有しています。すなわち私たちの体の中で練炭コンロの下部にある空気穴のような役割を果たしているのです。空気穴を開けると練炭の燃焼が早くなりますが、閉めると遅くなるのと同様で甲状腺ホルモンが正常より出すぎていると代謝が高まるため過度な熱が発生します。その結果、体温が上昇し、汗を多くかくようになり、体重が落ちます。また自律神経が興奮状態になり心臓の拍動が速まることで、大便が頻繁に出たり下痢を繰り返すことがあります。または神経が敏感になり手足がふるえる症状が現れることもあります。逆に甲状腺ホルモンが出ていない状態では、代謝が落ちるため体温が低下し、汗をかかなくなります。また顔や手足が腫れ、食べなくても体重が増加します。自律神経が鈍くなり脈拍が遅くなると胃腸の運動が弱くなるため便秘がおこりやすくなったり精神活動が遅くなるため記憶力が低下する可能性も存在します。
4. 甲状腺の病気
他の臓器と同様に甲状腺にも色々な病気が起こる可能性があります。甲状腺は甲状腺ホルモンを作るところであることから甲状腺では比較的に多くの異常が発生します。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることによって現れる症状を甲状腺機能亢進症といい、反対に甲状腺ホルモンが出なくなった状態を甲状腺機能低下症といいます。甲状腺の大きさは大きくなりますが、甲状腺ホルモンの分泌には異常がない場合の多くは単純性甲状腺腫に該当します。また甲状腺の一部が大きくなったりしこり(結節)ができる場合を甲状腺結節又は甲状腺腫といいます。甲状腺結節の原因は多くありますが、大抵は良性腫瘍であり、この場合は甲状腺の機能(甲状腺ホルモン)に影響がなく健康にもほとんど支障をきたしません。悪性腫瘍は「がん」を指しますが、甲状腺がんの場合は比較的に多く見られます。また嚢腫とは、しこりの中身が液状になっている状態をいい、良性腫瘍と同様に健康に悪影響を及ぼす恐れはありません。